スタジオメガネ@多摩センター


#ニュータウン#商店街#建築家#リノベーション#まちづくり




▼概要
戦後に大規模住宅地として中央都市の周辺に開発されたニュータウンが半世紀以上経ち、今の社会に適合するための過渡期を迎えています。

今回は多摩ニュータウンに拠点を置いている建築事務所のスタジオメガネの横溝さん夫婦(妻・宮澤さん)にお話を伺いました。スタジオメガネは建築の設計活動だけでなく食を通してまちの人と交流する「建築スナック」や社会学者の三浦展さんと郊外の講義を行う「世界の郊外展」などのまちに対しての活動を定期的に事務所で開催し、ニュータウンについて考察しながら多岐に渡り実践的に活動をしています。メディアでは盛んに取り上げられる都心や地方といった分野ではなくニュータウンのまちづくりを見ていきたいと思います。


目次

・多摩センターを事務所の拠点に選んだきっかけ
まちづくりの活動に「建築スナック」
・地域の大学との活動
・商店街に開いた建築事務所
・これからの多摩ニュータウンについて


■多摩センターを事務所の拠点に選んだきっかけ


僕はもともと飯田善彦さんの事務所出身でした。飯田さんは横浜に根差した活動をする建築家で、事務所に入りたての時に飯田さんが「book cafe」を開いて地域との繋がりを作るなどのまちの人と関わりを持ったプロジェクトを行い、建築の設計活動と並行して参加しました。



10年前は建築家がまちに開いて何か行うことは今ほど広まっていなくて、個人としても疑心はあったのですが、やっているうちに興味を持ち始めました。その経験からまちに対する拠点ということを意識していたと思います。


建築事務所として独立する際は予算内でできるだけ広いところを条件で最初はなんとなく都心を考えていました。その最中にハウスビジョンの講演(tabi labの成瀬さんの)を聞きに行く機会があって「移動自体がクリエイティブの要素になる」と言った話に対して強く共感を持ちそれがきっかけで日本ならどこでも良いいと思えるようになりサイトが広がって山奥の方まで探すこともありました。

その中で今の事務所と出会ったのは、実は事務所立ち上げ当初のメンバー全員がニュータウンの出身で、ニュータウンを再考するのも面白いのではと、妻の実家の多摩ニュータウンに泊まりに行った際の夜に散歩していたのがきっかけです。今の事務所が入っている商店街は真っ暗で人影がありませんでした。いわゆるシャッター商店街です。

建築家としてシャッター街は萌える材料でこの立地で団地群の中に商店街があって、商店街の中央には欅が植っているなど空間に対して魅了される要素が多くここなら何か面白いことできそうだなと思い、事務所をこの場所に置くことにしました。




■まちづくりの活動に「建築スナック」

宮澤さん:ここの事務所での最初の活動は建築スナックです。パルテノン多摩での講演会に社会学者の三浦展さんが登壇されていて、すごい面白い話をされていたので、もっと話を聞けないかダメもとでメールを送ってみました。



すると他の郊外やニュータウンを中心に活動している方を集めて一緒にご飯を囲みながら話をする建築スナックを開催することになりました。他のエリアの建築家やタウンマネージャーと言った専門家だけでなく多摩ニュータウンで活動しているベイカリーやコーヒー屋さんなどの知り合いを集めて行ったところ自分とニュータウンとの関わりをお互いに話して、今まで繋がることのなかった人たちが横の関わりを持つようになりました。

初回は大きなテーブルしかない状態で開催して、有識者の話を一方的に聞くのではなくて対等に会話できる状態を作れる空間が面白く、これが未来のシンポジウムなのだと大きな可能性を感じました。そこから派生して「世界の郊外展」というニュータウンに関するなどのイベントを定期的に事務所でやるようになりました。



横溝さん:昨年の2月ぐらいまで定期的に開催していたのですが、コロナが流行し始めて緊急事態宣言が発令されたのでその間は活動ができず、毎日やっていた居酒屋も一旦閉めて考える時間ができました。先行きが見えない状態で以前と同じことやっても上手くいかないだろうと意識があったので、空間の改修含めて新しいことに挑戦することにしました。

そこでできたのが今、事務所でやっている「メガネキッチン」です。通常のシェアキッチンのように利用者が来てキッチンを借りるのではなくて僕らと一緒に制作してキッチンの中で面白いものを生み出せる人だけに焦点を当てて活動を行っています。



利用してくれる方もまだチャレンジ段階の人が多いのでお互いに議論しながら試行錯誤して商品をデザインしてここで売っています。今は和菓子やアロマなどの商品を置いていますが、単純に商品を並べて売るのではなくてエッジの効いたものが生み出せないかデザインの観点から常に考えています。


宮澤さん:普通のシェアキッチンでは場所を順番に使用していくだけの活動ですが、一緒に制作を進めて、感性を共有しあえる関係性を保てる場があることで、化学反応によって新しいものが生まれるのではないかなと思っています。



ニュータウンも50年ほど経って多種多様な暮らしを許容うする器となり始めている。それを表に出す仕掛けを作ったら立ち寄ってくれる人も増えてきました。



不思議なことにニュータウンは面白い活動している方がいるにも関わらず、周りのみんなが知らないことが多い。個性が表立って出ていないのでそれがもっと前に出てきてもいいんじゃないかと思っていて、その役割を地域で担うのが商店街にあるのが自然なのかなと思っています。



■地域の大学との活動


横溝さん:他の多摩ニュータウンの活動で東京都のリノベーション支援事業に専門家として参加しています。事務所のある商店街の近くに豊ヶ丘商店街があって、そこの会長と話をして人が集まるような活動を模索し、商店街の活性化に取り組んでいます。恵泉女学園の社会園芸学の先生をお呼びして、商店街にあるポケットパークのリノベーションを計画しています。

今年度中にポケットパークはエディブルガーデンに変わり、恵泉の授業を行える場に環境を整えています。教室として使用するので一過性のものではないので商店街に若い人を誘致し、若い人が商店街に関わる機会に繋がると考えています。

宮澤さん:豊ヶ丘のリノベーション費用は第一生命の財団が主催している緑の賞に応募し、受賞して活動の資金を確保しました。活動をするにも商店会もお金がないのでそれをどこから取ってくるのかを考えることが重要になってきます。先が見えない中で融資を受けるのもリスクがありますし、少ないお金でも使えそうな補助金や賞金を探してお金がないなり考えて活動しています。


■商店街に開いた建築事務所


横溝さん:商店街を事務所にする場合は店舗なので敷金・礼金は半年分払わなければなりませんでした。なので改修費用までにお金は回らなかったのでDIYで施工することにしました。それからお金が出来たら改修していくやり方で現在まで続いています。

商店街のファサードに改修当初は雨風を凌げる周辺で買える一番安い透明材として波板を使用しました。しかし波板では光は通せるけど中見えなくて怪しい印象を与えてしまって開くに関してネックになり開口部になり得ないと分かり次に2mmのアクリルを使用しました。透明にしたくて模型を作る感覚で常にスタディして何がベストなのか探して今の形になっています。

一面がアクリルだと本当に透明だから視覚的にも環境的にも本当に外にみたいに感じれたり、常に事務所を改修しているので子供たちがまたお店が変わってるんじゃないかと興味を持ち、集まってくるような環境ができたりスタディを通して面白い発見がありました。

現在の状態になったのはコロナで時間が取れて少しお金をかけて改修しようと思って真っ直ぐだった開口部を斜めに動かしてみました。真っ直ぐだと境界線がしっかり敷かれて切れてる気がしたので試しに斜めにすることで、物理的に明るさを手に入れ、視覚的に拡がりを得ることができました。中にいると開口部の角度的に沿って無意識的に体が外側を向いてしまうのも新しい発見でした。

外では斜めにしたことでちょっとしたアクティビティが生まれてきています。出来た三角形の空間で井戸端会議が増え、事務所の前に集まる人が圧倒的に人が増えました。子供達が隠れんぼの際に隠れる場所として使ったりニュータウンにある独特な緊張感のある空気みたいなものを無意識に感じてるんじゃないかなと。


ニュータウンの屋外はパブリックじゃなくて触れづらい部分が多くてコモンスペースに近い。そこをいかに自由な場所として機能できるか興味があって試行錯誤しています。




■これからの多摩ニュータウンについて


横溝さん:建築設計といえばリサーチと建築という構図が多いと思いますが、まずプロジェクトを生み出し、そして建築をつくるところまでを実践する。これが僕らの活動の特徴です。プロジェクトが面白ければ建築もきっと面白いものができる気がしていて、まちに対するアクションもより面白いものができるのではないかと思っています。なので建築を作るきっかけの前段階のプロジェクトを起こすところがすごい重要だと感じています。


実際の建築やハードに関しては効率的に綺麗に作るのではなくて少し「はずし」の部分を入れる意識をしています。寝癖のようにそこにあるとずっと気にしてしまうような癖が愛着に繋がると思いますし、ずっと直していきたい余白にもなると思います。これからもそれをニュータウンの空間に作って行けたらと思っています。




(文責:遠山正一郎)

スタジオメガネにて