20210215  デザインのレシピが社会課題を解決する

モクチン木賃#モクチンレシピ#アパート#ストック活用#社会課題











▼概要

かつて、都市住居の一翼を担った木造賃貸(=木賃)アパート。老朽化、居住者の高齢化、空き家問題などネガティブな印象で語られることが多いこの木賃アパートですが、その規格に着目して誰もがリノベーションする際に使えるモクチンレシピを開発・運営するモクチン企画をご紹介します。

これまでの建築家とは異なり、レシピを用いることで大きな影響を与えることができます。建築家が実践するまちづくりは、どのような展開があるのでしょうか。



 

目次


・木賃アパート

モクチンレシピとパートナーズ

・新築事例「はねとくも」

・モクチン企画の創業のきっかけ

・これからのモクチン企画

・社会課題を解決する建築家

 

■モクチン企画について


モクチン企画は「つながりを育むまちを作る」ことを目的としています。都心に多く残る木造賃貸アパートの改修案をレシピ化した「モクチンレシピ」を開発・運営し、縮小化社会における都市デザインの方法を発明し実装しています。



■木賃アパート


木賃アパートは関東大震災や第二次世界大戦後など都市が壊滅した後に、山手線の外側などに大量に建てられ、木賃ベルトを形成しました。

現存しているものは戦後のものがほとんどで1960年代後半には東京都内の全住まいの約37%が木賃アパートであり、戦後から高度経済成長期の都市居住を担う一翼となりました。


現在は、①建物の老朽化②居住者の高齢化③木造密集地の形成から防災や社会福祉の問題と深く関係しています。

また家賃が低いことなどから様々な社会構造を抱えつつも住まいのセーフティーネットの機能を担っている。



■モクチンレシピとパートナーズ



モクチンレシピを使用することで一般の人でも木賃アパートが抱える空間、採光、設備環境、の問題を解決できるパッケージになっています。



ホームページ上で公開するだけでなく、埼玉、神奈川、福岡など全国の不動産管理会社(パートナーズ)と提携を結んで活用していることも特徴で、改修の提案を不動産管理会社が行うことでより多くの木賃アパートを改修でき、全体のデザインリテラシーを向上させることが可能です。



最低限の費用で高い利回りを狙う傾向にある木賃アパートでは改修単価は低いため、パートナーとして提携することは安定的な収入にもつながります。現場での意見や実務上の規制などによってレシピはアップデートされます。



■新築事例「はねとくも」


「はねとくも」は3戸のアトリエ付き木賃アパートの新築事例です。この設計依頼は埼玉県の不動産管理会社からである。モクチンレシピを使って改修することでクリエイターやデザイナーなど面白い人たちが集まる経験をもとに、単なる不動産会社とは異なり、交流できるような場を作っています。


レシピを使うことでデザインリテラシーが上がり新たなプロジェクトが誕生した事例です。



■モクチン企画の創業のきっかけ


モクチン企画を始めたきっかけは大学時、周りに社会起業する人が多く、ビジネスで社会問題を解決する点に憧れたからです。


モクチンレシピの原型は大学院の時にパタンランゲージのアップデートという視点から考えはじめました。下北沢で最初の木賃アパートを改修し、大きなエネルギーを注いでプロジェクトとしても成功したものの、街自体はあまり変化していないという感覚になりました。


社会により影響があるものを普及させる視点から汎用性のあるアイデアを普及するレシピに行き着き、NPOとして起業したのは、外部から投資を受けることを考えていなかったことと、組織の軸を社会課題の解決に設定したかったからです。



■これからのモクチン企画


レシピを使って木賃アパートを改修すると、家賃が上がります。これによってジェントリフィケーションのような新たな社会課題も起こってくるのです。本来、木賃アパートが持っていた住まいのセーフティーネットという性質を担保していくことも課題です。


また、モクチン企画にはまちづくり、プログラマー、コミュニティデザインなど様々な分野の人がいて、木賃アパート以外にも領域を広げていきたいと考えています。



■社会課題を解決する建築家


社会課題に向き合うモクチン企画だが、一貫して建築家の視点からデザインの力で課題と向き合っています。単に1つの場所や空間だけを解決するのではなく、レシピを開発し、木賃アパートという規格化された対象に適用していくことで社会的な課題に取り組み、大きな影響を与えようとしています。


これまでの建築家とは異なり、デザインに興味がある人たち以外も使えるような仕組みづくりと、それによってデザインリテラシーが向上し、まち全体が豊かになるような可能性があるのではないでしょうか。


今までネガティブに取り上げられてきた「木賃」がポジティブに変わるきっかけになるかもしれない。また、レシピで培った都市に対する戦略的なアプローチは木賃アパートに限らず、社会課題などにも展開していくのではないでしょうか。


(文責:西 昭太朗)

日本都市計画家協会のまちづくりカレッジの視聴をもとに作成